温故知新

 12月は、「師走」と呼ばれている。師(先生)が忙しく駆け回る時期だと言われている。しかしながら、今年の師走は、どうも例年と違っているようである。そう、それは、「コロナ」の影響だ。忘年会は自粛し、新年会も開く予定がないところが多いと聞く。サービス関係の仕事は、ばったり仕事がなくなって、飲食店関係は、店を閉めるところが増えている。こうした中で、物事をどう見直して、どのようにしたらいいのだろうか?

 「温故知新」と言う言葉がある。「古きを温(たず)ねて新しきを知る」と訓読みしする。「古きを温(あたた)めて新しきを知る」と書いたり読んだりすることもある。原文は「子曰、温故而知新、可以為師矣」となり、「温故知新」のあとに続く言葉がある。全体の書き下し文は、「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る、以って師と為るべし」となっている。

 過去において、100年ほど前に、スペイン風邪と言うのが流行った。スペイン風邪(H1N1新型インフルエンザウイルス)は、1918年から1920年にかけて流行し、世界の人口(当時18億人)の半数から3分の1が感染し、全世界で5000万人以上の人が死亡したとされている。スペイン風邪の流行は第1次世界大戦の後半と重なっており、この大戦による戦死者が1000万人だったことを考えると、実にその5倍の人々がスペイン風邪で命を落としたことになった。スペイン風邪は、患者1人が2~3人にうつす感染力があったとされ、パンデミックとなって世界で多数の死者を出したことなど、今回の新型コロナウイルス感染症とよく似ている。

 そしてやはり、100年前に起きたことは、ワクチンの開発とともに解決していった。しかし、その前に、第1には、人の移動や密集がいかに流行を拡大させるかということを思い知らされたことである。専門家が繰り返し啓蒙している“三密を避ける”ことの重要性を改めで認識させられた。第2には、流行は一つの波では終わらないということだった。集団免疫を獲得するまで繰り返し流行が起こり、そして感染をくりかえすことにより、ウイルスが変異して致死率が高まる可能性があるということだった。

 100年前の出来事は、世の中を大きく変えるきっかけとなっていった。それまでの「価値観」と大きく異なり、人々の「日常」と言うものが変わったのである。当然、考え方も変えねばなければならないだろうし、物事のやり方も変わらなければならないだろう。今までの価値観にしがみついていては、やっていけないこともあるだろう。では、どうすればよいのだろうか?

 地味でもいいから、こつこつと仕事をすることをお勧めしたい。100年前にスペイン風邪の後に、1929年に、「世界大恐慌」が来たことを思い出してほしい。それは、当時の人々が、株や投資に目を向けて、一時的な成金が世の中でもてはやされるようになった。それが、「世界恐慌」が来て、あっという間に、世の中が崩れたのである。今、コロナの猛威によって、世の中の産業はめまぐるしく変わるだろう。その株の上げ下げを利用して、儲けようとする人たちが多く出てきている。そして、実質経済が追い付かない時が来て、経済が破綻するのである。

 「積小為大」と言う言葉を聞いたことがあるだろうか?二宮尊徳の言葉で、小さなことを積み上げて、大きなことを成していく。と言う意味である。今からの時代には、地味でもいいから、こつこつと生産性のある仕事をすることが大切なのである。

2020年12月8日