日本人の美意識

 あなたは、日本人の中にどんな点を美意識があると感じるだろうか?ある人は、「日本人が持つ、わび寂の世界だ」と言う方もいるし、「自然の中に神が存在している」と言うことを取り上げる人もいる。あるいは、日本女性が着こなす着物や京都や奈良の風景に美意識を感じる人もいるだろう。

 今回、私が取り上げてみたいのは、実は「文字」である。意外かもしれないが、日本人は、「習字」と言う習慣を通して、文字の美しさを幼いころから学んできている。私もご多分に洩れず、小学校の2年か、3年くらいから、近所で習字を習っていた。その頃は、なぜ習字を習わなければならないのか全然わからなかった。

 しかし、今は、よくわかる。『日本人は、文字自体に「美」を見出していたのだ。』と言うことだ。このことに気づいたのは、日本人からではない。なんと、あるアメリカ人からである。皆さんもよく知っている人だ。それは、スティーブ・ジョブス(アップルコンピューターの創始者)。彼が、若いころ、大学を中退してから、もぐりの受講生として大学の講義に出席していたころに学んだのがカリグラフィである。文字を装飾するということであるが、後に、アップルコンピューターの文字フォントがなかなか美しくデザインされたものとなったのは、ここからきているのだろう。

 スティーブ・ジョブスのことで、印象に残るのは、2005年スタンフォード大学の卒業生に彼が語った15分ほどのスピーチである。その中で、「点と点は、結びつく」とか、「ハングリーであれ、愚か者であれ」と言う言葉などは、有名である。

 ジョブス自身が、美しさにこだわっていたのは、その製品の作り方からよくわかる。「i―マック」「iフォーン」など、非常にデザイン性が優れている。しかし、製品だけにとどまらず、ジョブズの生き方自体が美しさを追及しているものだったように思える。

 私は、ビル・ゲイツとスティーブ・ジョブスを比較した場合、どちらが好きかを言われれば、「もちろん、ジョブズ」と答える。今でもジョブズの言葉は、私の中に響いている。

2020年5月27日