道具を大切にする

左官の職人には、道具を大事にする人と、あまり無頓着な人がいるように思う。オオタの第一期生である岡さんの時代から道具を大事にする職人は、技術力を高めてきたように思う。例えば、鏝の握りの部分など自分にとっては長いと感じると、1センチから2セントほどのこぎりでカットしたり、鏝の左右が引っかかるような感じがすると、滑らかになるように砥石などで何度も何度も角が引っかからないように工夫をしていた。そんな職人さんたちは、現場でいい仕事をしていたものだ。

先日、㈱オオタの訓練生が訓練センターで作業を行っているのを目にした。左官の2級の検定台の練習をしていた。1年生と2年生で10名ほどが作業をしていたのだが、ある訓練生が、非常に道具を大事にしていた。O君と呼ぼう。彼は、まだ1年生だが、去年4月に入社してきたときに、将来何になりたいか、と言う質問に、㈱オオタの社長になりたいと明言していた。彼の道具箱は、昆虫の標本みたいに、道具が並べてあった。会社から支給される道具だけでなく、自分でも必要な道具をそろえているようだ。それらの道具を見て、面引き鏝の直線は持っていたのだが、R面の面引き鏝は、持っていなかったので、本人に聞いてみた。そしたら、値段が高いんですよね。とのこと、「いくらくらいするんだ」と、私が聞くと、4500円します。とのことだった。すこしづつ、給料をもらって、これからそろえていくのだろう。訓練生たちが自分にできることで一生懸命作業をしている姿にほほえましく思った。

かつて、プロ野球の阪神タイガーズに、掛布と言う、名選手がいた。彼は、試合が始まる前に、いつも自分のグローブに油を塗ったりしならせたりして、試合に備えたと言う。職人肌の選手である。彼は、バッティングでも素晴らしい成績を治めていた。

私たちも、仕事を行う際に、自分の道具を大事にし、良い仕事を成し遂げていきたいものだ。

2024年1月31日