じゅげむと桶屋とピコ太郎

「じゅげむ じゅげむ ごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょの すいぎょうまつ うんらいまつ ふうらいまつ くうねるところにすむところ やぶらこうじのぶらこうじ ぱいぽ ぱいぽ ぱいぽのしゅーりんがん しゅーりんがんのぐーりんだい ぐーりんだいのぽんぽこぴーの ぽんぽこなーの ちょうきゅうめいのちょうすけ」

落語の前座話でよく使われる題目である。長い名前をつければ縁起が良いとのことで、赤ん坊につけた名前が、上記のような名前である。話の内容よりも、暗記技術の練習、会話の間の取り方、人物の演じ分けなど、落語家の基礎訓練のためのものという色彩が濃い。しかし早口言葉の面白さがあり、前座噺のなかではよく知られたもののひとつである。言葉にリズムを持たせ、聞き手の心を引き寄せる訓練として考えると興味深い。

日本語の話しの面白さで勝負しているものもある。以下の「風が吹けば桶屋が儲かる。」という話である。

今日の大風で土ほこりが立ちて人の目の中へ入れば、世間にめくらが大ぶん出来る。そこで三味線がよふうれる。そうすると猫の皮がたんといるによって世界中の猫が大分へる。そふなれば鼠があばれ出すによって、おのづから箱の類をかぢりおる。爰(ここ)で箱屋をしたらば大分よかりそふなものじゃと思案は仕だしても、是(これ)も元手がなふては埒(らち)明(あか)ず
— 無跡散人『世間学者気質』より、慣用句辞典より転記

江戸時代の浮世草子『世間学者気質(かたぎ)』巻三(無跡散人著、明和5年、1768年)と言うから、随分古い話である。つまり、
大風で土ぼこりが立つ
1. 土ぼこりが目に入って、盲人が増える
2. 盲人は三味線を買う(当時の盲人が就ける職に由来)
3. 三味線に使う猫皮が必要になり、ネコが殺される
4. ネコが減ればネズミが増える
5. ネズミは桶をかじる
6. 桶の需要が増え桶屋が儲かる
という、一見結びつかない話が結びつくと言う結末である。まぁ、日本のことわざにも面白いものがあるものだ。

昔から、言葉のマジシャンはいろいろといるもので、最近は、ピコ太郎が、ユーチューブで、一億万回以上の再生回数で、あっという間に、世の中の人気者になってしまった。

日本語は、柔軟性があり、面白みがあるのだ。まじめに語ることもできれば、悪ふざけもできるし、奇妙な言い回しにもなったり、意味不明にもなったりする。そんな中、言葉のマジシャンたちがいろいろと現れてくるもので、言葉の真髄をわかったものだけが、人々の心を捉えていくのだろう。

私もまた、言葉のマジシャンでありたいものだ・・・

2017年2月20日