積極的傾聴法と司会の役割

会議を進行しているときに、時々出くわすことがある。それは、モンスターの出現である。このモンスターは、PTAの会議のときや、マンションの住民と管理組合との会合の際などに出現する。何のことですか?と言われる人のために、説明しておこう。モンスターとは、強力なクレーマーである。昔は、そんなにはいなかったが、近年、あちこちで出現する。自分の子どもがいじめなどを経験すると、学校が悪いとして、大きな問題にして裁判沙汰にもなるようなケースがある。先生の対応が悪いと、徹底的に主張するのだ。また、マンションと住民の会合の際も、マンションの管理組合の対応が悪いとして、徹底的に追求するような人がいる。そんな時、マンションの管理組合は、反省ザルのように、ただただ頭を下げているようなケースを目にしたことがある。気の毒な話だ。

このようなケースに出くわしたとき、会議の司会者はどのように対処すべきなのだろうか?そのようなモンスターをその場から退場させても、根本的な解決策にはなっていない。むしろ、司会者としてしなければならない対応の仕方がある。それは、積極的傾聴である。

積極的傾聴法(Active Listening)は、次のように説明されている。
相手の気持ちや考えを、相手の立場に立って理解する態度、あり方のこと。聴き手は自分の感情を誠実に包み隠さずに表現できることが求められる。また、相手の発言をすぐ否認や是認することは避けねばならない。このことで、相手とともに考え、感じるプロセスを共有し、やがて相手自身が問題解決できるように促すことをねらいとしている。

 積極的傾聴法とは、簡単に言えば、「相手の話をよく聴く」ということが基本となっています。相手の話をよく聴き、共感的な態度で相手のことを理解するようにつとめ、それによって良好な人間関係や信頼関係を作っていくことを意味しています。

 そして、“寛容的態度”とは、文字通り態度のことを指していて、普段の接触において相手の気持ちを尊重し受け入れること。批判的、評価的な態度を取らず、その人の個性までも認める態度を指しています。これは、相手の全人格を受け入れる度量が求められることになり、自分自身の器を大きく構える必要が出てきます。

 ロジャースの理論技法 積極的傾聴法(active listening)について、もう少し専門的に説明をします。ロジャースの理論技法(アクティブリスニング=積極的傾聴法)は来談者中心療法のおける主な技法とされています。

(1)単純な受容 simple acceptance
 相手の話を「あいづち」と「うなずき」しながら聴くことです。ひたすらクライエントの気持ち・感情をそのまま受け止め、受け入れる態度が傾聴の基本です。

(2)繰り返し restatement
 会話の中での発せられた言葉を「おうむ返し」することです。この時のポイントは相手の使った言葉をそのまま繰り返します。そのことで共感を強めていきます。

(3)反射 reflex
 文字通り「鏡」reflexになったつもりで、相手の言葉や非言語的表現に込められている「感情」「気持ち」に応じた繰り返しを行います。

(4)明確化 clarification
 クライエントの「感情」または「考え方」についての「不明確な表現」をより適切と思われる表現に直して言い換えます。相手が薄々気づいてはいるけれど、まだはっきりと意識していないところを先取りして、これを言語化(意識化)することを明確化といいます。

(5)質問 question
 判らないことは尋ねてよいが、できるだけオープンクエスチョン(開かれた質問Open question)を使って、クライエントに多くのことを話させるように努めます。イエス、ノーで答えられないような質問(何故・・・どうして・・・)。自分で言って自分で答えを出して行く方法をとります。

(6)場面構成 structuring
 主にコミュニケーションをスタートさせたり、気持ちの転換を促したり、話のこう着状態から離れる試みとして、場面の特性を説明したり、沈黙を脱するために言葉をかけることです。 

(Counselingroom nagimiより)

 ここに示しました6つの行為は特別カウンセリングの資格などを取らなくても誰でも練習によってできるようになります。カウンセリング・マインドをもって普段の接触に努めさえすればできることでしょう。その結果、自分の感じ方を高めることにつながり、そのことで豊かな人間性を形成していけると思っています。

「愛と癒しのコミュニオン」という本には、わかり易くアクティブリスニングの行為においての禁止事項を5つほど上げています。

 1、批判するな! 
 2、同情するな! 
 3、教えようとするな! 
 4、評価するな! 
 5、ほめようとするな!

 まさに、“積極的傾聴”と“寛容的態度”を貫くためにやってはいけない行為ということができるかもしれませんね。特に、上記の中にある同情(慰め)について、

『自分が死んでいると感じずに済んだのは、慰めてくれる人がいたからだ。だから、勘違いし続けることができたよ。しかし、慰めは必ずしも受容とならず違和感を覚えることがある。「大丈夫だよ、心配ないよ!」と言われると、私の感情がかき消されてしまうからだ。「しんどかったね」と私の感情を代弁してくれれば「そうか、私はしんどかったのか」と分かるようになるんだよね・・・・』と。・・・

積極的傾聴法は、その人が自ら質問して、自ら解決策を見出すように助けることです。ですから、変に同情していては、問題の解決策にはならないと言うことです。

ようするに、上記に書かれているようなことを参考にして、モンスター的な発言が会議の場で出てきたときは、ひたすら積極的傾聴法に徹し、司会者はその場を進めていかなければならない。と言うことです。

会議の場で、中には、クレーマー的な発言もする人がいますので、その辺り、特に司会者は工夫をしていきましょう。

2018年2月15日