外壁塗料には、雨水・風雪・日射熱等の外的環境要因から家屋を守る防水耐候力と、家屋内外の温度差により絶えず自然発生をする壁内結露を放出する通気・透湿性能との二大要素が求められます。

この二つの性能は共に相反する対極の性能ですので、一方を優先させると必ず他方は犠牲になります。通気・透湿性能を優先させた塗料を「湿式塗装工法」と呼び、他方の防水耐候力を優先させた塗料を「乾式塗装工法」と呼びます。

湿式工法(しっしきこうほう) は、現場で水を混ぜながらつくった、モルタルや土壁などの材料を使う方法です。施工は天候に左右され、乾燥の為の養生期間が必要なので工期は長くなります。壁仕上げの例ですと、漆喰、リシン、モルタル壁などの左官仕上げがあります。現場作業なので手間はかかりますが、材料の種類や調合方法で様々な質感や雰囲気が楽しめます。

乾式工法(かんしきこうほう) は、工場で生産されたパネルや合板などを現場で取り付ける工法です。養生期間の必要が無いので、天候に左右されることなく工期を短縮できます。外壁仕上げでは、工場生産のパネルを現場で取り付けるサイディングが代表例です。

住宅に限らず、建築界全体が湿式工法から徐々に乾式工法にシフトする傾向にありますが、最も大きな理由の一つは工期の短縮です。工期短縮は発注者、供給者双方に大きなメリットがあり、現場作業を減らし、工場生産品を多用する事で品質管理がし易くなります。

湿式工法は職人の技量の差が、そのまま出来具合に反映するので、腕の良い職人の確保が大切ですが、乾式工法はマニュアルどおりに施工すれば、一定の品質確保ができるので、職人の技量の差は湿式工法ほど問題になりません。

従来は湿式で施工していたタイル貼りや石貼りも、最近では乾式工法で施工されるケースも増えてきました。

20~30年前に比べると、左官職人の数は大きく減少しています。

浴室を例に挙げると、従来の現場施工は湿式工法に分類され、ユニットバスは乾式工法に分類されます。

現場施工の浴室よりユニットバスを選ぶ方が増えたことや、台所の流し台廻りの壁も、タイル張からキッチンパネルに変化していく中で、タイル職人も左官職人同様減少しています。

しかしながら、見直されている点もあります。それは、塗り壁の部屋が快適な理由として「空気の質」が挙げられます。大抵の塗り壁は、湿気を防いでカビ・ダニの繁殖を抑制し、気になるニオイや有害な化学物質を吸着・除去する性質を持っており、室内環境を健やかに保つ、人にやさしい素材です。

21世紀になり、自然志向の人々をはじめ、より良い環境の下で生活することを目指す人々が増えてきています。住環境を考えるときに、今、湿式工法が見直されています。これからの時代は、再び、左官の必要がクローズアップされるでしょう。